堆肥とは
微生物について
堆肥は、空気(酸素)があるところで活躍する「好気性微生物」が作ります。
空気がない嫌気状態での醗酵では、分解速度が遅くなったり、悪臭が発生したりするなどの問題があります。そのため、堆肥全体にまんべんなく空気を供給することが非常に大切です。
嫌気的醗酵と好気的醗酵の違い
嫌気的醗酵調整 | 好気的醗酵調整 | ||
1 | 増殖する微生物 | 偏性嫌気性菌、通性嫌気性菌 (アルコール醗酵、メタン醗酵) | 通性嫌気性菌、偏性好気性菌 (分解様式の大部分好気的) |
2 | 分解速度 (増殖速度) | 遅い(好気に対して1/3~1/5) | 速い(嫌気に対して3~5倍) |
ATP生成効率 | 有機化合物の酸化時に得られる△G(自由エネルギー)の変化は右の1/20 (1molのグルコース) 菌体収率Yx/s0.14 (グルコースを基質とする) | △G20倍 (左のグルコース) Yx/s0.4 左の3倍 | |
ATPの獲得方式 (生成様式) | 主として醗酵・電子受容体・供給体とも有機化合物で電子伝達鎖を通らない代謝様式。 | 主として呼吸、電子が電子伝達鎖を通る。 最終電子受容体は分子状酵素。 | |
3 | 臭気成分 | 嫌気醗酵の過程で臭気成分が生育される。 臭気負荷は大きい。 硫化水素・アミン類・VFA 他複合臭気成分 酸醗酵(液化過程)VFAなど。 第1段階→メタン醗酵(ガス化)2~3段階醗酵 | アンモニアを除けば臭気成分は生成されない。 臭気負荷は小さい。 CO2+水+硫酸イオン・硫酸イオン・NH3を主体とする。 単一臭気成分 VFA→CO2+水に分解。 有機物は単純にCO2・水・イオンに分解。 |
4 | 分解物の性質 土壤生態系 安定化機能 | メタン醗酵に到達したスラリーには有機物質含有率は低い無機物質が主体。 土壌態系活性化、安定化機能は低い。 | セルロース類、リグニンなど中位分解性、難分解性有機物を含む。 左の活性化、安定化機能は高い。 |
堆肥作りのポイント

堆肥作りの基本は、微生物に対して働きやすい環境を作ってあげることです。
そのポイントとして以下が挙げられます。
- 水分調整(酸素供給を目的とした通気性の改善)
- 切返し・攪拌(酸素供給と通気性の改善)
- C/N比の調整(C炭素とN窒素のバランス、20~30が最適)
- 温度コントロール(衛生処理等にも貢献)
- 微生物の栄養源の供給(主原料と副原料のバランス)
堆肥化の流れ(微生物の連携)

堆肥化は単一の微生物ではなく、さまざまな種類の微生物(複合微生物)の働きによってなされます。「スターター」から「アンカー」まで、それぞれ得意分野の分解分担・引継ぎが行われる、言わば微生物によるリレー競技です。
複合微生物は単一微生物と比べて、分解スピードがはるかに速い特性があります。
分解のフロー
細菌・糸状菌等 | デンプン、糖類など低分子の易分解性有機物の分解 |
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放線菌・細菌等 | やや分解しにくいセルロース、ヘミセルロースを分解 |
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細菌・担子菌等 | 難分解性のリグニンなどを分解 |